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安定同位体標識核酸を用いたNMR解析

「Biomolecular NMR」カタログ(大陽日酸 2015) 寄稿文

河合剛太

河合剛太
千葉工業大学
教授

核酸は古くから知られている分子であるが、特にRNAは、近年その生物学的な重要性が再認識され、構造生物学の研究対象として脚光を浴びている。タンパク質がさまざまな官能基をもつ20種類のアミノ酸からなり、そのNMRシグナルにバラエティがあるのに対して、核酸は4種類のヌクレオチドからなり、さらにいずれも塩基、糖、リン酸基という限られた化学構造でできていることから、NMRシグナルが密集する傾向にある。したがって、核酸のNMR解析において、安定同位体標識は必須である。

試料調製において、タンパク質の場合には、大腸菌など生細胞を利用した大量発現系あるいは細胞抽出液を利用した無細胞系が用いられているが、核酸の場合には、酵素合成あるいは化学合成が用いられる。これは主として、DNAは細胞中で大量に増えることはなく、またRNAについては細胞内あるいは細胞抽出液内で分解が速いことによる。DNAの安定同位体標識:DNA試料は、化学合成あるいはPCRで調製することができる。DNAの場合には、化学合成の効率が良いので、100残基程度でも調製が可能である。安定同位体標識されたデオキシアミダイトユニットを用いれば、配列中の任意の位置を標識できる。PCRの場合には、安定同位体標識dNTPを基質として用いることによって、標識DNAの調製が可能である。

4種類すべてを標識することもできるし、塩基の種類ごとに標識することもできる。なお、プライマーの部分は標識されない。短いDNA断片を作成する場合には、同じ配列を繰り返したDNAを用意して、PCRによって増やした後、制限酵素等で切断することによって効率良く調製することも可能である。R N Aの安定同位体標識:RNAの場合、30残基程度の短いものについては化学合成が可能であるが、それより長いものについては、試験管内転写法が用いられる。RNAの化学合成場合、リボースの2’位の水酸基の保護が必要となるため、DNAと比べて工程が煩雑であり、長いRNAの合成は効率が落ちる。それでも、任意の位置標識できるメリットは大きく、安定同位体標識アミダイトユニットを用いたRNAの化学合成は重要である。試験管内転写法では、T7 RNAポリメラーゼを用いる方法が一般的であり、多くの場合、


合成キットを用いた1 mLスケールの反応でNMR測定に必要な量のRNA試料が得られる。ただし、塩基配列によって転写反応の効率が大きく下がることがあり、また、5’末端がG残基であることが必要である。長いRNAの特定の位置を標識するためには、化学合成等で調製した標識RNA断片を含む複数の断片をT4 RNA ligaseなどによって連結する方法が有効である。

ワトソン・クリック塩基対が存在すると、グアニン(G)のNH1およびチミン(T)あるいはウラシル(U)のNH3のシグナルが10 ppmより低磁場に観測される。これらのイミノプロトンシグナルは、核酸の他のシグナルやタンパク質のシグナルと重ならないため、構造解析や相互作用解析において重要である。

安定同位体標識核酸を用いると、15N核の化学シフトからGであるかT/Uであるかが明確に区別できる(図1)。13C核の化学シフトを利用すると、アデニン(A)のCH2が他の塩基のCHと区別できる。また、シトシン(C)のCH5とUのCH5を区別できる。なお、DNAの場合には、CとTでスピン系が異なっているため、標識しなくても区別が可能である。核酸の場合には、各残基がリン酸基を介してつながっているため、タンパク質のような三重共鳴実験による連鎖帰属はできないが、安定同位体標識を行うことによって、一つの残基内の塩基とリボースのシグナルを関連付けることができ、また、塩基の15N核および13C核の化学シフトを利用することで分離能を改善することができる。もちろん、残基選択的な標識を行えば、シグナルの帰属の手間は大きく軽減される。

fig01

図1 RNAの15N-1N HMQCスペクトル(31残基,軽水中)15N核の化学シフトの違いによって, GとUが明確に区別できる. 11.3 ppm付近にG-U 塩基対に由来する2つのシグナルが観測されているが, これについてもGとUが容易に区別できることがわかる.

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